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仙台地方裁判所 昭和25年(行モ)1号 決定

申立代理人は、被申立人より申立人に対する昭和二十四年十二日二十七日付復第一八七号移轉命令書に基く移轉命令の執行は、これを停止する、との決定を求めた。

三、理  由

被申立人は申立人に対し特別都市計画法第十五條に基き、前記移轉命令書により、仙台市東四番丁十八番地所在の申立人所有の木造瓦葺平屋建外二棟建坪八十九坪二合五勺を昭和二十五年三月二十六日までに移轉すべき旨の命令を発し、更に昭和二十五年三月二十九日付戒告書により右移轉命令を履行しないときは被申立人においてこれを代執行する旨の戒告を発した。しかしながら土地区画整理施行のため必要があつて、建築物の移轉を命ずる場合には右第十五條により必ず換地予定地を指定すべきであり、その指定のないものはこれを違法となすべきところ、前記移轉命令にはかような換地予定地の指定がなかつたから、申立人は仙台地方裁判所にその取消を求める訴を提起した(昭和二十五年(行)第七号)。

しこうして前記移轉命令が執行されて前記家屋が取りこわされてしまうと申立人は回復することのできない損害を被るし、一方前記家屋を住宅または事務所として使用しておる訴外鈴木淳一郎、幸野和泉、日本商運株式会社仙台出張所および日本セメント株式会社仙台出張所等は住居又は営業所を奪われることとなるので、申立人等にとつて、前記移轉命令の執行は由々しい問題である。よつてその停止を求めるため本件申立に及ぶと述べた。(疏明省略)

よつて案ずるに、特別都市計画法第十五條第二項第十三條第一項の規定を單にその文字の上からみると、土地区画整理のためにする建築物その他の工作物の移轉命令をなすについては、あらかじめ換地予定地の指定をすれば足り、同法第十三條第二項の通知をなす必要がないように思われるけれども、同法第十四條第一項および第三項によれば換地予定地の指定を受けたものはその通知(同法第十四條第二項によれば從前の土地の全部又は一部について地上権、賃借権、永小作権又は質権を有する者その他命令で定めたもの(関係者)が換地予定指定の通知後使用收益をなすことのできる範囲は換地予定地指定の通知と共に通知することになつている)またはその使用開始の通知を受けた後でなければ換地予定地の使用をなすことができないのであるから、右通知がない限り從前の土地の占有者は移轉先がないこととなる。從つて同法第十五條第二項の移轉命令は同法第十三條所定の換地予定地の指定をなし且つ前記換地予定地の指定またはその使用開始の通知後でなければこれをなすことができないと解すべきで、このことは法文上地上の建築物その他の工作物の所有者がその土地につき権利を有しているものであると否とを問わないと解すべきである。

又、同法第十三條第二項によれば換地予定地の通知はその土地の全部または一部について地上権、賃借権、永小作権又は質権を有する者その他命令で定めるもの(関係者)があるときはこれらの関係者にもその旨の通知をすると規定していて、他に何等の制限を設けていないからこれらの権利者の権利が登記してあることはその要件でないと解すべきである。

しかしながら、特別都市計画法施行令第四十五條は所有権以外の未登記権利者も換地の交付を受けることを規定すると共にこれらの権利者はあらかじめ土地区画整理施行地区の告示のあつた日から一ケ月以内にその土地の所有者と連署しまたは権利を証する書類を添付し書面をもつて整理施行者に権利の種別およびその目的たる土地の所在を届出(以下單に権利の届という)なければならないと定めているのであつて、しかも換地予定地の使用はその性質上換地の交付を受けるものが換地として交付されるに先立ちあらかじめ予定地としてその使用を許されるものと考えられるから、このことから推して、未登記の権利者は右権利の届をしなければ換地の交付を受けることができず、從つてまた換地予定地の使用を許されることもないのであるからその指定およびその通知を受けることができない。すなわち、これを土地区画整理施行者の側からいえばかようなものに対しては換地予定地の指定および通知をしなくても違法ではないといわなければならない。

かように解釈すると、たとえば、土地の未登記賃借人は換地の指定もその通知も受けないうちに、すなわち移轉先が定まらないままで移轉命令を受けることがありうることになるけれども同法第十五條第二項により移轉命令が出されたときには、同法第十三條第一項により必ず土地所有者に対する換地の指定がなされている筈であるから移轉命令を受けた場合賃借地の換地を調査し所有者に対し自己の賃借範囲の確定を求めて移轉先をうることは容易なことである。

これに反して、土地区画整理施行者が廣範囲の地域にわたり権利の有無を個々について調査することは容易なことでないから、都市計画というような公の性質を帶びた事業の施行に当り、その施行者が登記してない権利者に対して一定期間を設けてその届をなす程度の協力を求め、この協力に應じないものに対して多少の不便を被らしめることとしても不当に利権を害したということにはならない。中には地主の連署を得ることができなかつたり、権利を証明する書面がなかつたりするような困難な事情があることも考えられるけれどもかような権利関係については、一應地主との間に爭があるか、少くともその権利関係が不明確であるともいいうるのであるから、そのような権利関係についてまで換地予定地の範囲を確定してこれを通知することはその権利者にとつては便利であろうけれども、地主にとつてはきわめて迷惑なことがあるであろうし、整理施行者にとつてははなはだ困難なことであつて時には不可能と思われることすらあるであろう。

以上説明したような理由によつて、未登記の権利者が所定の期間内に権利の届をしないならば、換地予定地の指定がなされている以上そのものに対しあらかじめ換地指定の通知をしないで移轉命令を出しても違法ではないと解すべきである。

本件についてみると、申立人は移轉命令を発するには特別都市計画法第十五條により換地予定地を指定すべきであるのにその指定がないから本件移轉命令は違法であるというけれども記録によれば申立人の所有する建物のある仙台市東四番丁十八番地に対する換地は同十五ないし十七番地と一括して、從前の同十五ないし十八番地の一部附近第十四ブロツク二十二号、二十九、三十号に指定され、昭和二十三年十一月九日付土地所有者である緑樹合資会社に通知され又昭和二十四年四月十八日付をもつて同日を使用開始の日と定めたことの通知があつたことの疏明がある。申立人に対し換地指定の通知がなされたことの疏明がないけれども、申立人の権利について登記があることまたは権利の届をしたことはその主張も疏明もないのであるから仮に右通知がなかつたとしても本件移轉命令が違法であるということはできない。

しこうして本件移轉命令が違法であることの疏明がない以上その取消される可能性もないと認めなければならないのであるから、その執行がなされることはやむを得ないことでこれがために申立人の被る損害は別途の方法によつて救助されるべきである。從つて右移轉命令が本訴により取消された場合を予想し、これによつて生ずべき損害を未然に防止するまでもなくこれを容れる余地がない、よつてこれを却下すべきものとして主文のとおり決定する次第である。

(裁判官 松尾巖)

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